国が資産形成を勧める為に作ったiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とつみたてNISAですが、どちらも税制優遇があり、資産形成に適していると言えます。とは言っても具体的なメリットが分からない方や両方始めたくても資金がなく、どちらかに絞って始めたいという方もいると思います。今回はiDeCoとつみたてNISAの2つの特徴を解説しますので自分に適した方を見つけてみましょう。
iDeCoとつみたてNISAの比較
iDeCoとつみたてNISAの概要は下表の通りとなります。
iDeCo | つみたてNISA | |
税制優遇①【購入時】 | 掛け金が所得控除 | ー |
税制優遇②【運用益】 | 非課税 | 非課税 |
税制優遇③【資金受取】 | 元本含め原則課税 (退職所得控除、公的年金等控除有) | 非課税 |
加入条件 | 20歳以上65歳未満の国民年金被保険者 | 満20歳以上の国内居住者 |
運用期間 | 最大40年(20~60歳) | 20年 |
年間非課税投資額 | 14.4~81.6万円 | 40万円 |
毎月最低積立額 | 5,000円~ | 100円~ |
取扱商品 | 定期預金・保険・投資信託 | 金融庁の基準を満たした投資信託・ETF |
加入(移換)手数料 | 2,829円(初回) | 無料 |
口座管理手数料 | 171円~(毎月) | 無料 |
資金引出し | 原則60歳まで不可 | 可能 |
資金引出し手数料 | 440円(1振込毎) | 無料 |
「iDeCo」のメリット・デメリット
メリット
iDeCoのメリットは節税効果が高い事です。特に掛け金が所得控除される部分については大きなメリットです。将来の資産作りをしながら節税で得た資金を若い内しかできないことに使うといった考え方ができます。
- 運用益が非課税(税金20.315%が無し)
- 掛け金が所得控除(所得税・住民税軽減)
- 受取時に税制優遇(一定額を超えると課税)
掛金の上限は下表のように、働き方や会社の制度によって変わります。
経費計上できない会社員にとってiDeCoは数少ない節税手段となります。
自営業 | 専業主婦(主夫) | 会社員 | 公務員 |
81.6万円 | 27.6万円 | 14.4~27.6万円 | 14.4万円 |
デメリット
節税の恩恵が受けれる反面、下記4点のデメリットが挙げられます。
①手数料や維持費がかかる
前述の比較表から手数料部分を抜粋したものが下表になります。口座管理手数料は毎月かかりますので、171円(運営管理手数料:0円)の金融機関を選びましょう。
手数料一覧 | 金額(税込み) | 内訳 |
加入又は移換(初回) | 2,829円 | |
口座管理手数料(月額) | 171円~ | ・国民年金基金連合会:105円 ・信託銀行:66円 ・運営管理手数料:0円~ (金融機関毎に異なる) |
資金引出し手数料(1振込毎) | 440円 |
②手数料負けする場合がある
手数料負けとは手数料が運用利益より上回ることです。以下3点が手数料負けの可能性を高くします。例として口座管理手数料171円(最低額)で毎月5,000円拠出した場合、年間の手数料負担率は3.42%になりますので、3.42%以上の運用利益を出さないと手数料負けとなります。
- 元本確保型商品(定期預金、保険)のみで運用
- 毎月最低金額の5,000円で拠出
- 口座管理手数料が高い金融機関で運用
③所得が低いと節税効果を活かしにくい
iDeCoの最大のメリットである掛け金の所得控除(節税)ですが、同じ掛け金でも所得の差で節税額が変わります。下表の通り高所得者ほど節税の恩恵を受けれることになります。つまり、所得がない専業主婦(主夫)は所得控除の恩恵を受けにくいことが分かります。また、経費などの他の控除でそもそも所得税・住民税が少ない方も、節税の恩恵を受けにくくなります。

④資金受取時に課税される可能性あり
iDeCoの資金受取時には、「退職所得控除」または「公的年金等控除」を利用することができ、税金が抑えられます。しかし、どちらもを一定額を超えると課税されるので、出口戦略をしっかりと立てておきましょう。
・退職所得控除
同じ年に退職金を受け取る場合、iDeCoの分と合算されますので、課税されるリスクが高くなります。
勤続年数 | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
・公的年金等控除
65歳未満であれば年間で70万円まで、65歳以上は年間120万円までが非課税の対象となります。こちらも非課税枠を超えると、超えた金額に対して課税されます。
「つみたてNISA 」のメリット・デメリット
メリット
①最長20年間の運用益が非課税
年間40万円を20年間投資ができ、その運用益にかかる税金が非課税になります。
②少額から始められる
積立を100円~始めることができます。限度額以内なら途中で積立額の変更も可能ですので、無理のない金額で始めてみて、資金に余裕ができたら金額を増やすやり方もできます。
③いつでも売却可
積み立てた投資信託をいつでも自分のタイミングで引出す(売却)することも可能です。ご自身のタイミングに合わせて住宅資金、教育資金などのライフイベント資金として活用することもできます。
④資金受取時も非課税
つみたてNISA期間内であればどれだけ運用益が出ても、③で売却して自分の銀行口座へ送金するまでに税金がかかりません。
デメリット
つみたてNISAの場合、致命的なデメリットと言えるものがなく、強いて言うなら以下の2点といったところです。
①選べる金融商品が限定されている
金融庁の厳しい条件をクリアした投資信託・ETFのみです。国内外の個別株式やREIT(不動産投資信託)などへ投資を考えている場合は、つみたてNISAではなく一般NISAを選ぶ必要があります。
②損失が出た際に税制上の恩恵を受けられない
通常の特定口座・一般口座で保有した商品の損失は、損益通算や繰越控除ができますが、つみたてNISAの口座で発生した損失は、税制上の恩恵はありません。
iDeCo・つみたてNISAそれぞれ向いている人
iDeCoに向いている人
- 毎月の掛け金が1万円以上(理想は上限)投資できる人
- 節税しながら老後資金を貯めたい人
- 自営業者で厚生年金に加入していない人
- 経費等の他の節税手段が無い(少ない)人
- 高所得者(昇給等で今後高所得になる可能性も含む)
つみたてNISAに向いている人
まとめ
「つみたてNISA」と「iDeCo」の特徴とそれぞれの向いている方をまとめてみました。会社員の方は節税の手段が限られてくるので、iDeCoは数少ない節税手段となります。つみたてNISAは、教育資金等のライフイベント用の資産構築に向いていると言えます。どちらにもメリットがあるので、資金に余裕のある方は両方始めても問題ないと思います。